第3回市民会議レポート
みやこちゃん
条例って、まちのルールのこと? なんだか難しそう……。
博士
そうだね。でも、ただルールを増やすためのものではないんだ。みんなの『なんでかよ』を、解決へ動かすための道具にもできるんだよ。
みやこちゃん
困りごとを、どうやって条例につなげるの?
博士
第3回市民会議では、実際の条例を読みながら、その方法を一緒に考えたんだ。
会の概要
日時 2026年8月16日(日)10:00〜12:00
講師 鈴木 秀洋さん(日本大学危機管理学部 教授/こどもまんなか専門家会議 座長)
テーマ 条例があると何が変わる?
第3回は、これまで学んだ「子どもの権利」を、宮古島のまちでどう守っていくかを考える回です。少し難しそうな憲法や条例の話も、身近な例を使って一つずつ学びました。後半には、ほかのまちの条例を手がかりに、宮古島で実際に出た困りごとの解決方法を探しました。
- 漢字を見つけるアイスブレイク
- 第2回「子どもの権利」の振り返り
- 鈴木さんによる講義「条例があると何が変わる?」
- 他自治体の条例を使ったケーススタディ
- グループでの感想共有とチェックアウト

前回の学びを、次の一歩へ
はじめに振り返ったのは、第2回で学んだ「権利は、みんなが大切にされるための当たり前のこと」という考え方です。
友達と遊びたい。安心して過ごしたい。自分の話を聞いてほしい。そんな毎日の願いも、子どもの権利につながっています。また、「意見」は上手に話した言葉だけではありません。表情や態度、泣くこと、絵や音楽も、気持ちを伝える方法です。
今回からは、参加者の声を受けてグループをシャッフル。子どもと大人がこれまでとは違うメンバーで話し、さまざまな見方に触れながら学びを深めました。
なぜ、宮古島で条例をつくるのか
講義を担当した鈴木さんは、大学で法律を教え、以前は自治体で働いていました。保育士の試験に3度挑戦した話や、ご自身が中学生だった頃の厳しい校則、部活動での体験も紹介しました。
鈴木さんが中学生だった頃は、部活動中に水を飲ませないことさえ「当たり前」とされていました。でも、昔の当たり前が、今も正しいとは限りません。今ある決まりも、本当に一人ひとりを大切にしているか、立ち止まって考えることが必要です。
条例とは 自治体が、その地域のみんなのために定める決まりごと。
地域で大切にしたいことや、地域ならではの困りごとに合わせて、権利を毎日の暮らしの中で守れる形にします。
子どもの権利条約やこども基本法があるのに、なぜ宮古島でも条例をつくるのでしょうか。全国共通の決まりだけでは、地域ごとの困りごとを細かく拾いきれないことがあります。鈴木さんは、宮古島の暮らしに合う具体的な形にすること、そして、みんなで大切なことを確かめ直すことに意味があると説明しました。
みやこちゃん
条約や法律があるなら、それで十分じゃないの?
博士
国の決まりは大きな土台なんだ。そこに、宮古島の暮らしや困りごとに合う具体的な仕組みを加えることで、初めて使いやすくなることがあるんだよ。
権利と決まりごとの関係を知る
講義では、憲法や法律、条例、学校のルールがどうつながっているかを図で確認しました。大切なのは、「決まりだから」で終わらせず、その決まりが一人ひとりを大切にしているかを考えることです。
憲法が示す基本的で大切な土台
- 一人の人として大切にされること 一人ひとりが自分の幸せを求められること(憲法13条など)
- みんなが平等に扱われること 性別や立場などを理由に差別されないこと(憲法14条など)
- 決まりも見直せること 大切な権利を傷つける決まりは、声を上げて変えていけること(憲法81条、98条、99条など)
日本国憲法 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法 第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
日本国憲法 第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
日本国憲法 第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
日本国憲法 第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
権利の中には、命を守られること、眠ること、自分の身体について自分で決めることなど、「これだけは特に大切にしたい」というものがあります。一方で、他の人の権利との衝突によって、公平の観点から調整が必要なものもあります。その権利が誰に対してでも主張し守られるべき強いもの(絶対的)か否か、どの程度の調整が許されるべきものか、その判断基準はどういったものか、など考えます(鈴木さんは比例原則などの法律の概念を、最近の性的マイノリティに関する裁判や喫煙と嫌煙の例で説明しました。)
また、鈴木さんは、プライバシー権のように、憲法の条文に直接その権利名が書かれていなくても保障されている権利があること、時代の変化や裁判を重ねる中で憲法で保障されている権利だと認めれてきたものがあると説明してくれました。参加者からは、保護者が子どもの写真をSNSに載せるときも、子ども本人の気持ちを聞く必要があるのでは、という意見が出ました。
条例は「抽象的」に書く? 「具体的」に書く?
ここで鈴木さんが使ったのは、「ガム」「お菓子」「食べ物」という身近な例です。「ガム」と書けば分かりやすいけれど、チョコレートは入りません。「食べ物」と書けばいろいろなものが入りますが、少し広すぎて(抽象的で)あいまいになって、本当に自分が手にしたい、ほしいものが手に入らないことがあります。
条例も同じです。「差別をしてはいけない」と広く書けば、いろいろな場面に使えます。でも、それだけでは、自分の困りごとが差別なのか気づきにくいこともあります。学校や保育園など、具体的な場所や例を書けば分かりやすくなりますが、細かく決めすぎると、書かれていない場面がこぼれてしまいます。
条例づくりの大切な問い
- 読んだ人が具体的な場面を思い浮かべられるか
- 書かれていない人や場面がこぼれないか
- 時代が変わっても使えるか
- 誰が、どのように条例を実効化(守っていく)していくのか(名宛人、その役割など)
- 作った条例を、今後どうやって、宮古島で、育て続けられるか
みやこちゃん
抽象的すぎても、また具体的すぎても、どちらにも問題が生じるんだね。
博士
そう。分かりやすさと、いろいろな場面に使える広さの両方が必要なんだ。宮古島で何を特に大切にするか、みんなで考えるところだね。

「なんでかよ」を、条例でどう動かせる?
後半は、例えば、大阪府泉南市の「子どもの権利に関する条例」が実際に宮古島で作られたとして、を実際に読んでみました。そして、宮古島で集まった身近な声を、どうすれば解決につなげられるか考えました。
みやこちゃん
「なんでかよ」と思うことがあったら、条例のどこを見ればいいの?
博士
まず、その困りごとに近い権利が書かれた条文を探すんだ。次に、相談できる場所や、動いてくれる仕組みまで読み進めてみよう。
条例を使うときの流れ
- 身近な「なんでかよ」を見つける
- 関係しそうな権利を条例で確かめる
- 相談や申立てができる場所を探す
- 市や関係する人に、対応と返事を求める
ケース1:先生のお気に入りで評価や態度が変わる
なんでかよ 同じことをしても、先生に気に入られている子だけ注意されなかったり、評価や接し方が変わったりする。
まずは、この困りごとに近い権利を探します。
① 第3条第1項で「差別なく守られる」と確かめる
子どもは、権利の主体として尊重され、いかなる差別もなく、子どもの権利条約に基づく権利を保障されます。
この条文を読むと、子どもは一人の権利の持ち主であり、先生のお気に入りかどうかで不公平に扱われてよいわけではない、と考える手がかりが得られます。
けれど、困っている相手が先生本人なら、子どもが直接伝えるのは難しいこともあります。そこで、次の条文を探します。
② 第6条第1項で「相談と救済を受けられる」と知る
子どもは、いじめや虐待、体罰その他の人権侵害を受けたとき、または受けそうな状況に置かれたとき、自己の権利として、その子ども自身が必要としている相談と救済を受けることができます。
ただ「差別はいけない」と書くだけではなく、困ったときに相談し、助けを受けられることまで書かれています。
③ 第15条で、相談・申立て先を見つける
さらに読み進めると、第15条に「子どもの権利救済委員会」が出てきます。
第1項 市長及び教育委員会は共同して、泉南市のすべての子どもの尊厳と権利が不断に尊重され、及び擁護され、救済される「まちづくり」を改めて推進するため、第6条第2項に基づいて、子どもの権利に関する識見を持つ有識者等で構成する、子どもの権利救済委員会(以下「救済委員会」といいます。)を設けます。
第2項 市民等は、子どもであるかおとなであるかを問わず何人も、第3条に規定する「子どもの権利の尊重」に基づき、子どもの権利が侵害されている疑いがもたれるとき、第6条第1項に規定する子どもの権利に根差して救済委員会に相談し、又は救済の申立てを行うことができます。
第3項 救済委員会は、自らを子どもの権利の擁護者、代弁者、そして公的良心の喚起者として深く認識し、その職務の遂行に努めなければなりません。
第2項を見ると、子ども本人だけでなく、大人も相談や救済の申立てができると分かります。つまり、第3条で権利を確かめ、第6条で相談と救済を受けられることを知り、第15条で具体的な相談先を見つける、という流れで条例を使えます。
みやこちゃん
条文を順番にたどると、相談できる場所まで見つかるんだね。
博士
そう。権利を確かめるだけでなく、困ったときにどう動けるかまで条例の条文に書いておくことが大切なんだ。次は、公園の例を見てみよう。
ケース2:近隣から苦情が出て、子どもが公園を使えなくなる
なんでかよ 近所から苦情が出たことを理由に、子どもが公園で遊べなくなってしまう。
① 第7条第1項で「遊ぶ権利」を確かめる
子どもは、休息と余暇、遊び、学び、文化的及び芸術的生活への参加の権利を持ち、そのために必要な居場所その他の環境の提供を受けることができます。
ここから、遊ぶことは単なる楽しみではなく、子どもが持つ大切な権利の一つだと分かります。公園を使えなくする前に、子どもが遊べる環境をどう守るか考える必要があります。
② 第8条第1項で、市の役割を確かめる
市は、市の職員及び子ども施設の職員が子どもの権利条約についての認識と理解を深め、この条例の具体的な実施に主体的に取り組み、もって子どもの最善の利益の実現に不断に努めることができるよう、子どもの権利に関する職員の積極的な学習及び研修等の機会を計画的に設けるものとします。
この条文から、市や子どもに関わる施設の職員は、条例を知るだけでなく、実際の仕事の中で子どもの権利を守れるよう学び、取り組むことが求められていると分かります。公園など市が関わる場所についても、この条文をよりどころに、「遊べる環境をどう守るのか」と市へ尋ねることができます。
③ 条例だけでは分からない点も見つける
一方で、第8条第1項を読んでも、公園のことを市のどの部署に相談すればよいのかまでは書かれていません。第15条の救済委員会へ相談するのか、公園を担当する部署へ伝えるのか、入口が少し分かりにくいところが残ります。
このように条例を実際の困りごとに当てはめると、書かれている権利だけでなく、相談先や次の動きまで分かりやすくする必要があると気づけます。宮古島の条例を考えるときにも、大切にしたい視点です。

書くだけでなく、使える仕組みまで
グループの話し合いでは、「相談・救済委員会と書かれていても、子どもには重く感じられるかもしれない」「市役所へ行くのはハードルが高い」「島のつながりが近いからこそ、相談したことを知られないか心配になる」といった声が出ました。
だからこそ、条例と一人ひとりをつなぐ身近な人が必要です。たとえば、条例をよく知り、そばで話を聞いてくれる人。学校や放課後児童クラブなど、普段の生活の中で声を受け止める人。子どもの困りごとを市へ届ける子ども委員。いろいろな案が出ました。ただし、学校など一つの場所に仕事を集めすぎず、支える人の負担にも目を向ける必要があります。
宮古島は、人と人とのつながりが近い島です。その良さがある一方で、「相談したことを知られたくない」と感じる子もいるかもしれません。子どもが安心して話せる場所を、島の暮らしに合わせて考えることが大切です。そして、条例は一度つくって終わりではありません。時代や暮らしの変化に合わせて見直し、みんなで育てていくことも必要だという意見が出ました。
今回、大切にしたいこと
- 条例は、地域のみんなで決める、地域のための決まりごと
- 宮古島の困りごとに合わせて、権利を守る方法を形にすること
- 権利の言葉だけでなく、相談・助け・返事までをつなげること
- 分かりやすさと、いろいろな場面に使える広さの両方を考えること
- つくって終わりにせず、使いながら見直し、育てていくこと
みやこちゃん
条例って、完成した文章を読むだけのものじゃないんだね。
博士
うん。困ったときに使えて、声を届けたら返事が返ってくる。そんな仕組みまで考えて、初めて暮らしを支える条例になるんだ。
みやこちゃん
宮古島の『なんでかよ』を、一つずつ確かめながらつくっていきたいな。
鈴木さんは最後に、条例は担当者や市長が変わっても大切な考えを引き継ぎ、未来の子どもたちへ渡していくメッセージであり、贈り物でもあると話しました。
市民会議は、約8か月・全15回を予定しています。これからは、これまで集めた声を手がかりに、宮古島らしい条例の中身をさらに考えていきます。
あなたの声も、条例づくりの一歩に
市民会議の内容を読んで、どんなことを感じましたか?
「これ、大事だと思う!」
「条例にこんなことを入れてほしい」
「ここがよく分からなかった」
「なんだかモヤモヤする…」
どんなことでも大丈夫です😊
あなたの小さな気づきも、宮古島の条例をつくる大切な声のひとつです。
名前を書かずに送ることができます。気軽に、あなたの声を聞かせてください🌱